区画を分けるゾーニングの考え方、入退室管理で共連れをどう防ぐか、サーバ室の環境対策、クリアデスクと媒体の廃棄まで整理。情報処理安全確保支援士試験での問われ方も解説します。
物理的な対策は地味に見えますが、そこを抜かれると技術的な対策の多くが意味を失います。端末を持ち去られれば、そこに保存された情報は取り出せます。サーバ室に入られれば、直接操作されます。書類を持ち出されれば、暗号化は関係ありません。「その場に立てるかどうか」は、依然として重要な防御線です。
建物全体を同じ厳しさで守るのは、費用の面でも運用の面でも現実的ではありません。そこで、扱う情報の重要度に応じて区画を分け、奥へ行くほど条件を厳しくします。ネットワークをゾーンで分けるのと同じ考え方で、「入られても、そこから先へは改めて認証が要る」という段を作ります。
| 区画 | 例 | 要件 |
|---|---|---|
| 公開区画 | 受付、来客の待合 | 誰でも入れる。業務情報を置かない |
| 業務区画 | 執務室 | 社員証で入室。来客は受付と同行 |
| 機密区画 | サーバ室、書庫 | 個別の認証と記録。入室者を限定 |
注意が要るのは、区画の境目です。窓、天井裏、非常口、搬入口——正面の扉を厳しくしても、別の経路が緩ければそこから入られます。「一番弱いところが全体の強さになる」という原則は、物理でも同じです。
入退室管理の目的は、入れないようにすることだけではありません。誰がいつ入ったかが記録に残ること自体が、抑止と、事後の調査の両方に効きます。ただし、記録が意味を持つには「一人ずつ認証されている」ことが前提になります。
これを崩すのが共連れ(テールゲーティング)です。正規の入室者に続いて、認証せずに一緒に入る。記録上は一人しか入っていないことになり、後から追えません。対策としては、一人ずつしか通れない構造の扉(アンチパスバック機能付きの回転扉やマントラップ)を使う、監視カメラと併用する、そして「後ろの人を通してあげない」ことを規程で明示し、それが失礼にあたらない文化を作ることです。
アンチパスバックは、入室記録の無い人の退室、あるいは退室記録の無い人の再入室を拒否する仕組みです。共連れで入った人はその後の扉で止まるため、貸し借りや同行を検知できます。
機密性だけでなく、可用性も物理の守備範囲です。停電、空調の停止、水漏れ、地震——どれもシステムを止めます。無停電電源装置と自家発電、温湿度の監視、水の配管を上に通さない、ラックの固定。加えて、消火設備は水ではなくガス系にする(機器を濡らさない)という定番の論点があります。
離席時に書類を出しっぱなしにしない(クリアデスク)、画面をロックする(クリアスクリーン)。地味ですが、内部の人間や来客が目にする機会を減らす基本です。印刷物の放置も同じで、認証してから出力される仕組みにすると、置き忘れが減ります。
廃棄も物理の論点です。書類は裁断し、記憶媒体は物理的に破壊するか、復元できない方式で消去します。ファイルを削除しただけ、初期化しただけでは、データが残ることがあります。委託する場合は、破壊したことの証明を受け取るところまでを手順に含めます。
監視カメラは、抑止と事後の確認の両方に効きます。ただし、置いてあるだけでは意味が薄く、運用まで含めて初めて機能します。必要な範囲が映っているか、暗いところで判別できるか、保存期間は調査に足りるか、記録を見られる人が限られているか。特に保存期間は、事故に気づくまでに時間がかかることを踏まえて決めます。数日で上書きされる設定だと、いざ調べようとしたときには残っていません。
カメラの映像は個人情報にもあたりうるため、設置目的の表示や、閲覧できる人の限定といった配慮も要ります。守るために置いたものが、別の問題を生まないようにする——このバランスも、設問で問われることがあります。
午前Ⅱでは、アンチパスバックや共連れの意味、サーバ室の環境対策が問われます。午後では、事務所の見取り図や入退室記録を示して「記録に矛盾がある理由」「どう防ぐか」を書かせる形が出ます。記録の矛盾を突く設問では、共連れやカードの貸し借りを疑うのが定石です。
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